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2007年11月8日

タリン市の都市開発計画に暗雲?

9月末に開催された英国・エストニア商工会議所の会合で、タリン市の都市計画主任が開発 計画のコントロールができていないと語ったため、タリン市の将来に関する関心が集ま っている。 開発されるタリン市

エストニアの首都タリンでは、建築物に対する美観上の統制が行われていないこと、 公共交通を拡張する計画はEUの投資計画を頼りにしていること、また道路については拡 張せずに自律的な交通システムが確立することを当局は求めていることなど、タリン 市議会の都市開発計画に、不安な一面が顔を覗かせている。

新しくタリン市の都市計画主任に任命されたEndrik Mand 氏は、英国・エストニア商工 会議所主催のセミナーで「議会は開発を促進したり、指揮したりする権限はほとんど無く、 開発業者に市の将来を託している」と語った。 また、「私の業務の中に道路計画は殆ど無い。因みに、混雑のひどい港湾地区の混 雑緩和に役立つと期待され、かなり話題になった“北部幹線道路”はEUの投資待ちで頓 挫している。技術的な計画書は存在しているものの、お金の裏付けが無い」とも語った。

市街電車の路線延長もEUの投資待ち状態。「MustamaeとPiritaの郊外、及 びUlemisteの空港への市街電車の新線建設計画は最後の段階を迎えているものの、市が これに必要となる投資をEUから得なければ先に進めない状態になっている」 「道路の建設・延長の計画は無い。通行に制限を加えて自立的に車の流量をコン トロールする仕組み("self regulating" system)を市は考えてはいるが、必ず問題が 生じるだろう。つまり、ドライバーはその地区を避けて通るようになり、もし我々がある 地域の道を拡幅すれば、ドライバーはそちらに集中し、逆に混雑することになる。 結局堂々巡りになるだろう」とMand 氏は語った。

市が開発の進展を期待している地区は、中央港湾地区近くのビジネスと居住の混合地区、 old Lasnamae limestone pits周辺の娯楽と居住の混合した公園地区、及び北部タリン半 島の高層ビル街だが、市が所有する土地は10%で、しかも開発可能な土地は僅か2%。 市はこの地区再開発計画を促進、乃至誘導する手段を持てず、全ての主要な再開発地区 は開発業者の指揮下にあるようだ。

Mand 氏はまた、多くの新しい建築物が建築学上のビジョンもなく作られており、市の 建築基準には美観上の基準も存在しないことも指摘し、 「我々は美観上好ましくないビルの建設をストップさせる法的な権限は与えられていな い。単に説得することしかできない。コントロール可能なのは、市中心街の高層ビル と、絵のように美しい木造家屋のあるKalamajaの様な郊外の保護地区内の建築物だけで ある」と語った。

2008年には完成することになっている市中央の巨大なショッピング・娯楽複合施設である New Sakala Centerの建設は順調にすすんでおり、各種のショップの他、シネマコンプレッ クスやコンサートホールもできる予定。しかしこの施設は公共交通機関に頼っており、 バスや市街電車の利用を促進するために路線の延長が期待されてはいるが、これもEU の投資待ちなのだろう。